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「レディ・チャタレー」 官能小説の古典 繊細に淡々と

藤枝正稔2007/09/15

フランス映画NA
予告編(360K)
「レディ・チャタレー」
 D・H・ロレンスの官能小説「チャタレー夫人の恋人」には実は3つのバージョンがある。小説として出版されて裁判沙汰になったり、映画化されてきた有名な「チャタレー夫人の恋人」は第3稿がもとになっている。「レディ・チャタレー」は、第2稿を映画化したものだ。

 1921年。第1次世界大戦で下半身不随となった夫のクリフォード・チャタレー卿との生活。体の触れ合いも心の結びつきもなく、冬景色に閉ざされた石造りの邸宅は、夫人のコンスタンスにとって息の詰まる灰色の牢獄のようだった。彼女とチャタレー卿に雇われている森の猟番・パーキンは、それぞれ深い孤独を抱えていた。春の目覚めとともに森の中でともに過ごすうち、ごく自然に愛し合うようになる──。

 パスカル・フェラン監督は、女性らしい繊細な視線で淡々と描く。ロレンスの原作を忠実に再現したのか、物語の章と章の区切りにはナレーションと文字が挿入され、流れが説明される。見る前はかなり淫靡でエロティックな作品だろうと想像していたが、そんな色眼鏡を覆す純粋な文芸作品だ。

 夫との不憫な生活を送るコンスタンスの元を、住み込み看護人のボルトン夫人が訪れ転機が訪れる。夫人の勧めで森へ散歩に出かけたコンスタンスはパーキンと出会い、足しげく森番小屋に通うようになり2人は結ばれる。気の効いた言葉やムードもない事務的な性交渉であるが、悦びに満たされたコンスタンスと対照的に、使用人であるパーキンは「奥様を戒めた」と感じている。そんな2人であったが、体を重ねるうちに雇い主と使用人の垣根はなくなり、1人の男と女としてお互いを理解し、かたく閉じた心の中を開放していく。

 ところどころで原作通りなのか、きわどい性描写のためなのか、画面は暗転を繰り返し、物語の流れが切れるのに違和感を持った。コンスタンスとパーキンの愛の表現も、性交渉以外に、2人そろって全裸で雨の中を走り戯れ、裸の相手の体を花で飾るなど、文章を読んで頭の中で想像するには美しいかもしれないが、直接映像として見せられると、滑稽なうえ純粋すぎて恥ずかしくなる。映像と文字で表現する芸術の難しさを感じると同時に、もう一歩踏み込む余地を残したあっさりとした演出に、もどかしさも感じた。しかし、美しいヒロインを演じたマリナ・ハンズと、無骨な容姿に反して繊細な心の持ち主パーキンを演じたジャン=ルイ・クロックの2人は、観る者の心のひだに訴える演技。ロレンスの世界に新たな息吹をもたらしている。

×××××


「レディ・チャタレー」(2006年、フランス)

監督:パスカル・フェラン
出演:マリナ・ハンズ、ジャン=ルイ・クロック、イポリット・ジラルド

秋、渋谷・シネマライズほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
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