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「人が人を愛することのどうしようもなさ」 石井隆×喜多嶋舞 壮絶な化学反応

藤枝正稔2007/09/13

日本映画NA
「人が人を愛することのどうしようもなさ」 (C)2007東映ビデオ・オービー企画
 「GONIN」「花と蛇」で知られる石井隆監督が描く究極のヒロイン“名美”が復活した。演じるのは「GONIN2」に出演した喜多嶋舞だ。石井監督は喜多嶋を想定して初稿を書き、熱烈なラブコールを送る。応えた喜多嶋は女優としてすべてをさらけ出した。完成した作品が「人が人を愛することのどうしようもなさ」だ。

 石井作品独特の、右斜め上がりの縦書体のタイトル。廃墟になったボーリング場で人質を救出するヒロインが、敵の罠にはまり半裸で椅子に縛りつけられ、電気による拷問に悶絶する。SM的にショッキングなシーンで幕を開け、監督の濃厚な世界が冒頭から炸裂する。喜多嶋の体当たり演技が、作品への意気込みを感じさせられるオープニングだ。
 
 竹中直人演じる編集者・葛城が、スタジオの調整室で喜多嶋演じる名美にインタビューする様子に、名美が出演する映画「レフトアローン」、劇中劇の「ブラックバード」「愛の行方」がフラッシュバック形式に複雑に絡み合う構成で話は進む。名美は俳優の夫・洋介と破局の危機を迎えていた。下り坂の洋介は若い女優と浮気をしている。新作映画「レフトアローン」は、名美演じる鏡子の夫役に洋介、その愛人に洋介の浮気相手……とスキャンダラスなキャスティングが話題となる。葛城のインタビューに答える名美は、現実と虚構の世界を行き来しながら迷宮に堕ちて行く。

 名美のキャラクター設定は、喜多嶋本人の経歴を色濃く反映したものだ。15歳で美少女アイドルとしてデビューし、後に女優に転身した設定。名美と喜多嶋の生き様が重なり、喜多嶋の私生活を見ている錯覚さえ覚える脚本が優れている。喜多嶋も監督の無理な要求を、すべてのんで演じ切った印象。全編通して半分以上のシーンが裸に近い。

 名美は人気女優でありながら、夜な夜な街角に立つ売春婦。SM的なものからコスチュームプレイなど、ポルノ映画と見まがうシーンの連続だ。極めつけは薄暗い電車の中、下着を着けずに座席に座り、大きく足を開いてケバケバしい化粧をし、向かいの席に座った若いカップルを挑発するシーン。電車の窓ガラスを雨粒が濡らし、雷の閃光がカメラのフラッシュのごとく強い陰影を作り出す。妖しく浮かび上がる喜多嶋の姿は、性と愛に飢えて壊れてゆくエロティシズムを映し出し、石井演出の真骨頂と感じた。

 現実と虚構をさまよう名美を待つのは、観客の予想を遥かに上回るひねりのある着地点。脚本を書いた石井監督のアイディアは卓越している。独特の世界観を描き続ける石井監督。その究極のヒロイン・名美を演じ切った喜多嶋舞。2人のコラボレーションは、とてつもない化学反応を起こしてしまった。

×××××


「人が人を愛することのどうしようもなさ」(2007年、日本)

監督:石井隆
出演:喜多嶋舞、津田寛治、永島敏行、美景(みかげ)、伊藤洋三郎、山口祥行
   中山俊、城明男、志水季里子、品川徹、竹中直人

全国公開中。作品の詳細は公式サイトまで。
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