「中国の植物学者の娘たち」 官能漂う映像美
神崎奈緒2007/12/11


孤児院で育ったミン(ミレーヌ・ジャンパノワ)は、住み込み実習生として植物園を訪れ、厳格な植物学者とその娘・アン(李小冉=リー・シャオラン)に出会う。アンも母を亡くし、孤独を感じていた折、二人の心は自然と寄り添い、共感と愛情を抱くようになる。
監督は「同性愛を描きたかったのではなく、自由な恋愛を許されない社会を客観的に描きたかった」とのこと。新聞記事をもとに着想したそうだ。このような感情を完全に理解する人は少ないと思うが、彼女らの互いを見つめる瞳から静けさと熱情が伝わってくる。二人の経緯を見守ってきた観客にとって、彼女らの行動や感情の流れは十分納得いくものだし、それに対する社会の好奇の目や不理解な態度が邪悪なもの、あるいは滑稽にも思えてくる。キャラクター描写は随分単純だが、そのぶん人物の心の機微が鮮明に浮き上がる。
そして、映像美は一見の価値がある。チラシにも書かれている通り、韓国のキム・ギドク監督(「うつせみ」「弓」)やベトナムのトラン・アン・ユン監督(「青いパパイヤの香り」)作品に似た香りが漂う。湿気を帯びたアジアの雰囲気や、繊細な心情描写のせいだろうか。映画の中でも、文字通りに雨や汗、蒸気や涙という「水」が随所に映され、エキゾチズムや瑞々しさが表現されている。同時に、描き方はやはりフランス風に思えるのだ。ダイ監督は長くフランスに住んでおり、フランスで映画製作を始めたため、映像美と官能性にこだわり、言葉のないシーンにこそ真髄があると言っているようだ。 そう、植物園や湖の情景は、まるで自分と違う世界のアトラクションを見るように美しい。また二人の女性は体型も顔立ちも対照的だが、寄り添うことで共鳴するように美しさを放っている。特に温室のシーンは芸術的な映像で、女性から見ても全く嫌な気がしない。
外界から遮断されたつかの間の二人の楽園は、観客にもその温度と陶酔感を届けてくれる。
「中国植物学者の娘たち」(2005年、カナダ=仏)
監督:戴思杰(ダイ・シージエ)
出演:ミレーヌ・ジャンパノワ、李小冉(リー・シャオラン)
12月15日、東劇、梅田ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
写真:(c)2005 SOTELA ET FAYOLLE FILMS – EUROPACORP - MAX FILMS - FRANCE 2 CINÉMA
