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「中国の植物学者の娘たち」 官能漂う映像美

神崎奈緒2007/12/11

中国映画NA
「中国の植物学者の娘たち」
 「小さな中国のお針子」(02)で日本でも絶大な支持を得た戴思杰(ダイ・シージエ)監督の新作が「中国植物学者の娘たち」である。タイトルからはちょっと想像できないストーリー展開だったが、映像の美しさ、心情の緻密な描き方に高い芸術性を感じた。二人の女優もそれぞれの個性を放って、見事な「フレンチ・オリエンタル」を作り上げている。

 孤児院で育ったミン(ミレーヌ・ジャンパノワ)は、住み込み実習生として植物園を訪れ、厳格な植物学者とその娘・アン(李小冉=リー・シャオラン)に出会う。アンも母を亡くし、孤独を感じていた折、二人の心は自然と寄り添い、共感と愛情を抱くようになる。

 そんな毎日に変化を与えたのが、アンの兄の帰宅だった。兄は父親と結託し、ミンとの結婚話を進めてゆく。心が離れるのを恐れるアンとミンは、永遠の愛を誓い合うのだった。

 監督は「同性愛を描きたかったのではなく、自由な恋愛を許されない社会を客観的に描きたかった」とのこと。新聞記事をもとに着想したそうだ。このような感情を完全に理解する人は少ないと思うが、彼女らの互いを見つめる瞳から静けさと熱情が伝わってくる。二人の経緯を見守ってきた観客にとって、彼女らの行動や感情の流れは十分納得いくものだし、それに対する社会の好奇の目や不理解な態度が邪悪なもの、あるいは滑稽にも思えてくる。キャラクター描写は随分単純だが、そのぶん人物の心の機微が鮮明に浮き上がる。

 ふと、近年高い評価を得た李安(アン・リー)監督の「ブロークバック・マウンテン」(05)を思い出した。私はあまりアジア映画を知らないが、考えてみれば「ブエノスアイレス」(97)の王家衛(ウォン・カーウァイ)、「東宮西宮」(97)の張元(チャン・ユアン)など、多くの中華圏監督が同性愛をテーマとして取り組んでいる。世界的に一つの恋愛の形として認められつつある時代であるとともに、堅い社会の中の“タブー”こそ、純化された愛として描きやすいのかもしれない。多くの人が孤独と共存している世の中で、同性でも心を通い合わせる相手が見つかったなら、幸せだ。

 そして、映像美は一見の価値がある。チラシにも書かれている通り、韓国のキム・ギドク監督(「うつせみ」「弓」)やベトナムのトラン・アン・ユン監督(「青いパパイヤの香り」)作品に似た香りが漂う。湿気を帯びたアジアの雰囲気や、繊細な心情描写のせいだろうか。映画の中でも、文字通りに雨や汗、蒸気や涙という「水」が随所に映され、エキゾチズムや瑞々しさが表現されている。同時に、描き方はやはりフランス風に思えるのだ。ダイ監督は長くフランスに住んでおり、フランスで映画製作を始めたため、映像美と官能性にこだわり、言葉のないシーンにこそ真髄があると言っているようだ。 そう、植物園や湖の情景は、まるで自分と違う世界のアトラクションを見るように美しい。また二人の女性は体型も顔立ちも対照的だが、寄り添うことで共鳴するように美しさを放っている。特に温室のシーンは芸術的な映像で、女性から見ても全く嫌な気がしない。

 外界から遮断されたつかの間の二人の楽園は、観客にもその温度と陶酔感を届けてくれる。

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「中国植物学者の娘たち」(2005年、カナダ=仏)

監督:戴思杰(ダイ・シージエ)
出演:ミレーヌ・ジャンパノワ、李小冉(リー・シャオラン)

12月15日、東劇、梅田ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
写真:(c)2005 SOTELA ET FAYOLLE FILMS – EUROPACORP - MAX FILMS - FRANCE 2 CINÉMA