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「つぐない」 運命の三人 罪に翻弄され

藤枝正稔2008/01/14

英国映画NA
「つぐない」
(c) 2007 Universal Studios. All Rights Reserved.
 英ブッカー賞作家、イアン・マキューアンのベストセラー小説「贖罪」を、「プライドと偏見」のジョー・ライト監督と主演女優のキーラ・ナイトレイが再び組んで映画化した大河ロマン「つぐない」。1930年代、戦火が忍び寄るイギリスを舞台に、身分の違う恋人が引き裂かれ、運命に翻弄される物語だ。
 
「つぐない」予告編(2分24秒)

 タリス家の使用人の息子・ロビーに「ラストキング・オブ・スコットランド」のジェームズ・マカヴォイ。同家の長女・セシーリアに「パイレーツ・オブ・カリビアン」のキーラ・ナイトレイ。次女・ブライオニーは時代の変化に合わせ3人の女優が演じる。シアーシャ・ローナン(13歳)、ロモーラ・ガライ(18歳)、「ジュリア」のヴァネッサ・レッドグレイヴが老年時代を演じている。

 35年のイングランド。政府高官の長女・セシーリアは、兄と妹として育てられた使用人の息子・ロビーを愛していると気づく。生まれたばかりの二人の愛は、小説家を目指す多感な妹・ブライオニーのついた嘘によって引き裂かれる──。

 タイプライターのキーを叩く音がリズムとなり、ピアノとオーケストラがつむぐ流麗なメロディーに乗って映画は幕を開ける。優雅な上流階級の生活がブライオニーの視点で描かれる。小説家志望の少女は、想像力が人一倍豊か。13歳という多感な年ごろのブライオニーにとって、大人の世界は未知の領域である。ポイントはブライオニーと、彼女が見た当事者と、二つの視点が時間軸をずらして描かれるところにある。観客はブライオニーの視点を先に見せられ、彼女と同様「見てはいけないものを見てしまった」と思う。続いて緊張感の中、時間軸が少し戻って真実が語られる。斬新でミステリアス、エロティシズムを感じさせられる演出がうまい。大人の世界を覗き見てしまった少女の思い込みと嘘で、ロビーの運命の歯車は大きく狂い始める。

 4年後。仏軍に従軍したロビーは戦地に送られ、セシーリアは家族の元を離れてロンドンで看護士に。ブライオニーもロンドンで看護士見習いをしていた。セシーリアとロビーの再会と別れは、ダリオ・マリアネッリの美しい旋律により、古いフランス映画のワンシーンを見るよう。「シェルブールの雨傘」のジャック・ドゥミ作品を思わせる美しさだ。

 一方、ロビーの見た戦地の描写には息をのむ。森の中に折り重なる制服姿の少女の遺体。海岸に大規模なセットを組み、大勢のエキストラを動員して再現される“ダンケルクの撤退”のシーン。カメラの振動を抑える装置・ステディカムを使い、長回しで淡々と戦争の狂気を見せる。時は過ぎ、老年を迎えたブライオニーは作家として最後の作品「贖罪」を書き上げ、テレビのインタビューに答える。自分の発言で運命を狂わされたセシーリアとロビーの、衝撃的な消息が語られる。

 贖罪をテーマに、多感な少女な心の揺れを、ミステリアスな語り口と時間軸をずらす斬新な演出で魅せる。セシーリアとロビーを演じた二人もいいし、何よりも若き日のブライオニーを演じたローナンとガライの好演が印象に残った。濃密な展開の中、ラスト数分間の衝撃は、ここ数年に見た作品の中でも忘れられないものになった。このほど発表された米ゴールデン・グローブ賞では、最優秀作品賞を受賞した。米アカデミー賞をはじめ、映画賞レースの台風の目になるだろう。

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「つぐない」(2007年、英)

監督:ジョー・ライト
出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、ロモーラ・ガライ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、シアーシャ・ローナン、ブレンダ・ブレッシン

4月GW、新宿テアトルタイムズスクエアほかで全国順次公開。PG-12指定。作品の詳細は公式サイトまで。
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4月GW「つぐない」