「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」 画家の秘密に迫る
沢宮亘理2008/03/06


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作者名を見ると、Henry Dargerとある。ヘンリー・ダーガーと読むのだろうか。興奮した私は「この画家を紹介したカタログかパンフレットはないか」と職員に尋ねたが、「ない」との返事だった。カタログも作られないほどの無名画家なのか。諦めるしかなかった。
ほとんど他人と交渉をもたずに生涯を閉じたダーガーの人生がいかなるものであったかを解明するのは、容易な作業ではない。監督のジェシカ・ユーは、自伝の引用、大家や隣人の証言とともに、彼の作品を用いたアニメを制作して、何とかこの独創的なアーティストの実像をあぶり出そうとしている。
今日、ダーガーの作品としてスポットが当たっているのは、この挿絵のほうであるが、塗り絵の印象があるのは、彼がゴミの中からあさった新聞や雑誌から切り抜いた写真やイラストを、トレースやコピーにより加工して使用しているためだろう。素材の多くは“少女”だった。完成したダーガーの少女には男性器が付いているが、彼が女性の裸を知らなかったためなのか、意図的なものなのかは謎である。
幼児期に母親を亡くしたダーガーは、病弱な父親のもとから少年施設へと移される。その後、誤診により知的障害施設に入れられた後、病院で雑役夫の職に就き、それが彼の生涯の仕事となった。女性と接触する機会はなかったかもしれない。
ともあれ、ダーガーが築いた「非現実の王国」の謎解きは、いま始まったばかりである。
「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」(2004年、米)
脚本・監督・製作:ジェシカ・ユー
ナレーション:ダコタ・ファニング、ラリー・パイン
春、渋谷・シネマライズほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
