フランス人の彼女とアメリカ人の彼が、パリで過ごす2日間。旅先で微妙にすれ違う二人の心を、ユーモアたっぷりに描くコメディー「パリ、恋人たちの2日間」。監督・脚本・主演のジュリー・デルピーはインタビューで「恋愛や愛情を通じて、人は幸せになれるのか。男女は真に分かり合えるのか。疑問を投げかけたかった」と話した。
「パリ、恋人たちの2日間」でメガホンを取ったジュリー・デルピー=東京・有楽町で4月26日、筆者撮影
フランス人の彼女とアメリカ人の彼が、花の都・パリで過ごす2日間。旅先で微妙にすれ違う二人の心を、ユーモアたっぷりに描くコメディー「パリ、恋人たちの2日間」(5月24日公開)。監督、主演、脚本など一人6役を務めたのは、「恋人たちの距離(ディスタンス)」「トリコロール 白の愛」のフランス人女優、ジュリー・デルピーだ。ウディ・アレンを思わせる軽快なテンポで、パリの街と人々への愛をつづる。東京都内でこのほど行われたインタビューで、ジュリー・デルピーは「恋愛や愛情を通じて、人は幸せになれるのか。男女は真に分かり合えるのか。疑問を投げかけたかった」と話した。
フランス人のマリオン(ジュリー・デルピー)とアメリカ人のジャック(アダム・ゴールドバーグ)。付き合って2年、ニューヨークに住む二人は、2日間の休暇を過ごすため、マリオンの故郷・パリを訪れる。待っていたのは、奔放でいたずら好きなマリオンの両親、次々と現れるマリオンの元恋人たち、ジャックの理解を超えて個性的なパリの人々だった──。
誰もが経験する恋人同士の危機が、軽快で気の利いたセリフ回しで展開される。リチャード・リンクレイター監督、イーサン・ホーク共演の「ビフォア・サンセット」(04)では脚本を担当し、米アカデミー賞脚色賞候補となったジュリー・デルピー。メガホンを取った「パリ、恋人たちの2日間」では、舞台俳優である自身の両親を起用している。
「パリ、恋人たちの2日間」
一問一答は次の通り。
──どこかで見たようなパリの風景と人々。リアルな感触を出そうとしたのか。
面白おかしいコメディーを撮りたかった。自分が面白いと感じる恋愛をテーマに、前々から書こうと思っていた物語。「ビフォア・サンセット」(04)を作り終えて、次はコミカルな作品にしようと考えた。恋人たちの別れを描くので、難しいテーマも含まれてはいる。(アダム・ゴールドバーグが演じた)ジャックはポスターでかっこよく描かれているけれど、実際の彼はこれほどよくないわ(笑)。笑いの中にシリアスな要素を取り入れる手法は、当初から考えていた。パリにいる48時間の間に、恋人同士の二人が別れる。別れをいかに面白く描くか。
──監督、脚本、製作、主演、音楽、編集と何役もこなす原動力はどこから。「ジャン・リュック」という名の猫が出てくるが、ゴダール監督の影響は。
猫の名前は、ゴダールへのちょっとした“目くばせ”。ゴダールはとても好きだけれど、「ジャン・リュック」は猫につける名前じゃないわ。主人公の二人は「(フランスで)ボボ(BOBO=比較的裕福だが、心はボヘミアンでありたいと願う人々)」と呼ばれる人たち。三十代で流行の先端を行っている。だから猫にそんな名前をつけるのかもね。映画を作りたいとずっと思っていたけれど、なかなか実現できなかった。その間に感じた無力感、苦痛、不安などが蓄積され、エネルギーに変わったのでは。女優として長く仕事をしてきたが、思うようにならなかったこと、あきらめたことは多かった。
──配役が絶妙だった。監督自身の両親、アダム・ゴールドバーグを起用した理由は。
両親の起用は、脚本段階から考えていた。発案当初は本当に予算がなかったから。彼らは舞台俳優として40年のキャリアがあるので、彼らに合った役を作ろうと。両親への恩返しにもなるでしょう。アダムは非常に力のあるコメディアンだと常々思っていた。悲しげなピエロの役が似合い、彼が不幸になればなるほど、見ている人はおかしく感じる。この映画には重要な要素を持っている。ちょっと心を病んでいるような、ニューヨークのユダヤ人のようなイメージ。「ウディ・アレンに似ている」という人がいるが、彼よりかっこいいわね。とてもかわいらしい人よ。体はがっしりしていて……自分の体が好きなのよ(笑)。俳優は見せたがりだから。
「女優として長く仕事をしてきた。ずっと映画が作りたかったが、なかなか実現しなかった」と話すジュリー・デルピー=同
──社会の現状を皮肉るセリフも出てくる。盛り込んだ理由は。
シニカルで政治的な部分をあえて重視した。ラブコメディーにはたいてい「記号化された形式」がある。政治的な言葉は省かれ、口げんかも出てこない。逆にわざとそんなシーンを入れることで、ラブコメの常識を壊したかった。政治的な要素は不可欠だった。
──ベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストタンゴ・イン・パリ」(72)をまねて写真を撮るシーンがある。どんな意味をこめたのか。
「ラストタンゴ・イン・パリ」は、愛やセックスを激しくとらえた作品。同じような気持ちを持ってはいるが、それほどの情熱は持てないのが「パリ、恋人たちの2日間」の二人。だからあえて「ラストタンゴ・イン・パリ」のシーンを入れた。(主演の)マーロン・ブランドに全然似ていないアダムに、同じことをさせるのは面白いしね(笑)。
──映画「ダ・ヴィンチ・コード」のロケ地を回る米国のツアー客が登場する。普段から「バカみたい」と思っていたのか。
「ダ・ヴィンチ・コード」の公開後、世界中から団体観光客が来るようになった。パリに住む人にとってはイライラする要素。教会を傷つけたりもするし。バカげたツーリストとして描いてみた。
──男女が違いを超えて平和的に過ごすには、何が必要か。
自分でもよく分からない。私は人生は長い長い苦痛の継続だと思う。恋愛や愛情を通して、人間は本当に幸せになれるのだろうか。私が幸せを感じるのは仕事をしている時。愛情を通して幸せになること、人間同士が深いコミュニケーションを取ることは難しい。自分でも確信が持てない。
まるっきり(愛を)信じられないのなら、一生ずっと一人でいるのだろうけれど、どこかで信じている部分もある。しかし、疑問の方がより多い。愛は成就するのか、作品を通じて疑問を投げかけた。人間の強さや重さはそれぞれ異なる。真の人間関係は成り立つのか。男と女は本来、水と油なのではないか。中和はされるのか。「体と体を重ね合わせた時」と思う人もいるかもしれない。しかし体を重ねれば、同時に傷つけ合ってもいる。私が常に疑問に思うことなのだけれど。
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「パリ、恋人たちの2日間」(2007年、仏・独)
監督・脚本:ジュリー・デルピー
出演:ジュリー・デルピー、アダム・ゴールドバーグ、ダニエル・ブリュール、アルベール・デルピー、マリー・ピレ、アレクシア・ランドー、アダン・ホドロフスキー、アレックス・ナオン
5月24日、恵比寿ガーデンシネマ、新宿ガーデンシネマほかで全国順次公開。作品の詳細は
公式サイトまで。