日本劇場未公開の新作8本を一挙紹介する特集上映「台湾シネマ・コレクション2008」が8月23日、東京・シネマート六本木で開幕する。三、四十代の若手監督を中心に、長編デビュー、2作目を集めたフレッシュなラインナップ。開幕を前に07年台湾映画興行収入1位となった「練習曲」の東明相(イーストン・ドン)、陳懐恩(チェン・ホァイエン)監督らに話を聞いた。
そろって笑顔を見せる「練習曲」主演のイーストン・ドン(左)とチェン・ホァイエン監督=東京・六本木で7月29日、筆者撮影
“映画の島”台湾から、新しい風が吹き始めた──。日本劇場未公開の新作8本を一挙紹介する特集上映「台湾シネマ・コレクション2008」が8月23日、東京・シネマート六本木で開幕する。三、四十代の若手監督を中心に、長編デビュー、2作目を集めたフレッシュなラインナップ。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、楊徳昌(エドワード・ヤン)、李安(アン・リー)、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)らの次世代を担う、新しい才能に注目だ。
台湾映画としての07年興行収入1位となった「練習曲」。聴覚障害を持つ大学生が、自転車で台湾を一周するロードムービーだ。美しい台湾の風景、旅先で出会う人々との触れ合いを通して、青年の心の成長を静かに切り取る。美術デザイナーとして活動する東明相(イーストン・ドン)の俳優デビュー作。ホウ・シャオシェン作品の撮影監督を長く務めた陳懐恩(チェン・ホァイエン)監督初の長編作品となる。
開催を前に「練習曲」のチェン・ホァイエン監督、イーストン・ドン、「DNAがアイ・ラブ・ユー」のピーター・ホーがこのほど来日し、東京都内でインタビューに応えた。まずは「練習曲」の二人に見どころを聞いた。
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「練習曲」 (C)2007 Ziegfeld Films Co.,Ltd
ギターを背負った青年が、風渡る海辺の道を駆け抜ける──。台湾を一度でも訪れ、穏やかな人と風景に触れた経験があれば、必ず心を奪われるだろう。チェン・ホァイエン監督の「練習曲」は、監督や俳優ら作り手の“故郷・台湾”への愛があふれる作品だ。自身も聴覚障害者のイーストン・ドンは「映画に出演したことで、心の窓が開かれ、世界が広がった。人生が大きく変わった」と語る。過剰な演出とセリフを排し、自然の音と青年の心の声に耳をすませたチェン監督。「島をぐるりと一周する経験を、台湾の人々に味わってほしかった」と話した。
「映画への出演は、僕の人生の転換点となった」と話すイーストン・ドン=同
一問一答は次の通り。
──タイトルを「練習曲」とした理由は。
チェン監督:最初の構想は「卒業間近の大学生が、台湾を一周する」だった。ある時、大学生が浜辺でギターを練習する光景が頭に浮かんだ。脚本が書き上がるころ「映画の内容には『練習曲』がふさわしいのでは」と思うようになった。新たな旅立ちへ向け、青年が奏でる曲──「練習曲」が。
台湾一周を意味する「環島(ホアン・ダオ)」は、台湾の人々にとって耳慣れた言葉だ。しかし、実行している人はそう多くない。自転車で一周するには時間がかかる。社会人なら1週間は休みを取らなければならないだろう。つまり若いうちでなければ実現できないことなのだ。この作品を通して、台湾の人々に島をぐるりと一周する経験を味わってほしかった。
「映画出演は、僕の人生を大きく変えた」
──美術デザイナーとして、これまで絵や文章で表現活動をしてきた。初めて体を使った演技に挑戦し、自分の中で変わったことは。
イーストン・ドン:映画に出る前は、悩みごとがとても多かった。人生うまくいかないな……と悲観的になっていた。自分にとって「練習曲」への出演は、大きな転換点になった。人との付き合い方も変わり、自分の心の窓が開き、世界が広がった気がした。生活を楽しめるようになり、人の話をもっと聞きたい、困っている人を進んで助けたい、と思うようにもなった。映画への出演は、僕の人生を大きく変えるきっかけとなった。
──脚本段階から彼を起用する予定だったのか。
チェン監督:いいえ。脚本を書いている時は彼をまったく知らなかった。たまたまある現場で彼と知り合い、彼の持つ独特の雰囲気に引かれた。ある種の距離感にも興味を持った。恐らく直感だったのだろう。私が考えている主役に合うな、と。彼が出演を引き受けてくれた後、脚本をもう一度書き直した。
──映画の仕事の魅力は。今後も続けていきたいか。
イーストン・ドン:演技はとても魅力的な仕事。今まで見えなかった世界を僕に与えてくれた。これまでの仕事と結びつける形で今後も歩いていきたい。
──日本統治時代に起きた事故にまつわる「サヨンの鐘」が登場する。
チェン監督:(村に赴任した日本人教師を見送る途中、事故で亡くなった地元の少女・サヨンを称えて作られた)「サヨンの鐘」については、当時の資料がいろいろ残されているが、台湾の人々によく知られているわけではない。地元・宜蘭(ギラン)では現在、「サヨンの鐘」が観光の目玉の一つとなっている。
「サヨンの鐘」については、台湾に興味深い誤解が広がっている。サヨンの話は、西條八十作詞、古賀政男作曲で日本語曲「サヨンの鐘」にもなった。後に台湾では地元の言葉で歌詞が付けられ「月光セレナーデ」というタイトルでヒットした。ところが、歌詞の内容が日本人教師とサヨンのラブストーリーになっていたため、実際に二人は恋仲だった……と多くの人が思い込んだ。私はサヨンの姉の子供たちに取材をしたが、まったくの誤解と分かったんだよ。
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このほか、女性監督・周美玲(ゼロ・チョウ)の「Tatto─刺青」は、女性同士の恋愛がテーマ。主演は台湾の楊丞琳(レイニー・ヤン)、香港の梁洛施(イザベラ・リョン)。人気の若手女優二人が顔を合わせ、07年台湾映画興行収入2位を記録した。彭于晏(エディ・ポン)の「ウエスト・ゲートNo.6」、何潤東(ピーター・ホー)の「DNAがアイ・ラブ・ユー」、張孝全(ジョゼフ・チャン)の「午後3時の初恋」は、それぞれ若手の注目株が主演。さらに、昨年の東京国際映画祭に出品された「遠い道のり」は、「藍色夏恋」(02)などで日本での知名度も高い桂綸鎂(グイ・ルンメイ)が主演。すがすがしい魅力を見せる。テレビドラマを中心に活動する鈕承澤 (ニウ・チェンザー)初の長編監督・主演作「ビバ!監督人生!!」、江口洋介、張震(チャン・チェン)、陳柏霖(チェン・ボーリン)と豪華キャストが話題となった「シルク」にも注目だ。
「台湾シネマ・コレクション」は9月26日までシネマート六本木で。11月に大阪・シネマート心斎橋ほかで全国順次開催。作品の詳細、上映スケジュールは
公式サイトまで。
「Tatto─刺青」 (c)THREE DOTS ENTERTAINMENT
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「DNAがアイ・ラブ・ユー」 (c)THREE DOTS ENTERTAINMENT
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「ウエスト・ゲートNo.6」 (c)2006 Yi Tiao Long Hu Bao Studio & Jump Boys Films.
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「午後3時の初恋」 (C) 2007 Joint Entertainment International Inc.
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「遠い道のり」 (c)2007 Qixia Films
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「ビバ!監督人生!!」 (c)2008 Honto Production
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