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「インビジブル・ターゲット」 ベニー・チャン監督に聞く

香港の若手3人、体当たり演技 「いい映画を作りたい。より難しいアクションで」
遠海安2008/08/28
「私はただ、いい映画を作りたい」。謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、余文樂(ショーン・ユー)、房祖名(ジェイシー・チャン)。香港期待の若手俳優が体当たり演技に挑むポリス・アクション「インビジブル・ターゲット」。「今の時代、いいアクション俳優を探すのは至難の業だ」と話す陳木勝(ベニー・チャン)監督。成龍(ジャッキー・チェン)の次の世代をにらみ、「より難しいアクションの実現」を目指す。
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<center>「インビジブル・ターゲット」で若手俳優3人を起用したベニー・チャン監督。体当たり演技が見どころだ<br>=東京・渋谷で7月3日、筆者撮影</center>
「インビジブル・ターゲット」で若手俳優3人を起用したベニー・チャン監督。体当たり演技が見どころだ
=東京・渋谷で7月3日、筆者撮影
 映画は娯楽だ! むこうみずなアクションにハラハラし、情感あふれるドラマに心打たれ、お決まりの大団円にホッと胸をなでおろす。香港・陳木勝(ベニー・チャン)監督の作品を見ると、そんな原点を思い起こさずにはいられない。8月30日公開の新作「インビジブル・ターゲット」もしかり。笑いあり涙あり、見ごたえ十分の本格ポリス・アクションだ。「私はただ、いい映画を作りたい」。シンプルな理想を掲げ、職人監督は娯楽の道をひた走る。

 謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、余文樂(ショーン・ユー)、房祖名(ジェイシー・チャン)。監督は「インビジブル・ターゲット」で、香港期待の若手俳優3人を主役に選んだ。

 「キャストを決める前、それぞれ呼んで聞いたんだ。『ちゃんと戦えるか。殴られても我慢できるか』って。3人とも『やります』と答えたので起用した」

作風とは対照的に、穏やかな横顔。ジャッキー・チェンの信頼も厚い=同
作風とは対照的に、穏やかな横顔。ジャッキー・チェンの信頼も厚い=同
 現金強奪事件に巻き込まれ、最愛の恋人を失ったチャン刑事(ニコラス・ツェー)。事件の犯人グループに襲われ、名誉を汚されたフォン警部補(ショーン・ユー)。捜査のためグループに潜入した兄が行方不明になったワイ巡査(ジェイシー・チャン)。3人の前に立ちはだかるのは、実力派アクション俳優の呉京(ウー・ジン)、安志杰(アンディ・オン)演じる悪役コンビだ。必死で後を追う3人。ニコラスは二階建てバスに飛びついてはねられ、ビルの屋上から転がり落ちる。ショーンはウー・ジンに殴られ蹴れて気を失い、ジェイシーは火だるまに。見ている方が痛くなる、体当たりシーンの連続である。

 「撮影初日、ニコラスとウー・ジンが屋根から飛び降りるシーンを撮った。ワイヤーで吊っていたんだが、空中で二人が交差し、膝と膝をぶつけて痛めてしまった。二人とも重要な役だから、中断するわけにいかない。撮影の間中、どちらも痛みをこらえていたと思う」

 ニコラス、ショーン、ジェイシー。異なる3人の個性を的確にとらえ、キャラクターが作り上げられた。

 「ニコラスは武術マニア。家でも棒を振り回し、トレーニングを続けている。カンフーものからドラマまで、彼は大スターになる逸材だ。ショーンはあまりアクションが好きではなく、普通のドラマが得意だね。ジェイシーは多才。デビューしたばかりでまだ“良い子”のイメージだが、今後いろいろな監督が彼を変えていくだろう」

 ご存知の通り、ジェイシーの父は大スター、成龍(ジャッキー・チェン)である。

 「ジャッキーは武人で、ジェイシーは文人。ジェイシー自身、戦いがあまり好きではない。演技力を伸ばし、ドラマを演じられる俳優になってほしい」

「今の時代、いいアクション俳優を探すのは至難の業」=同
「今の時代、いいアクション俳優を探すのは至難の業」=同
 映像製作の道に入って26年。1981年から香港のテレビ局・TVBに勤務し、杜[王其]峰(ジョニー・トー)監督のもとでアシスタントを務め、多くのテレビドラマを製作した。90年に「アンディ・ラウの逃避行」で映画監督デビュー。98年の「WHO AM I? フー・アム・アイ?」以降、ジャッキー・チェンの厚い信頼を得て、「香港国際警察 NEW POLICE STORY」(05)、「プロジェクトBB」(06)などの主演作を監督してきた。アクションとドラマのバランスよさが、ベニー・チャン作品の真骨頂。郭富城(アーロン・クォック)、鄭伊健(イーキン・チェン)、呉彦祖(ダニエル・ウー)主演の「ディバージェンス 運命の交差点」(05)など、男同士の骨太ドラマも得意とするところだが、女性が主人公の作品や文芸作品を撮るつもりはないのだろうか。

 「アクション映画を撮ることを、出資者や市場が私に求めている。いいアクション俳優を探すのは、今の時代とても難しい。男性でも難しいのだから、女性はなおさらだ。必然的に私は男性の映画を撮ることになる。恋愛ドラマを撮ってみたいとも思うよ。出資者が『好きに撮っていい』というならね」

 大規模な出資に、豪華キャスト。作品にかかわる人間が増えれば増えるほど、監督は身動きが取れなくなるのでは。自分の中に「これだけは譲れない」部分はないのだろうか。

 「大作であれ小品であれ、さまざまな意見が出る。でも、自分の中に『譲れない』と思う部分はないんだ。なぜならすべての意見が『いい映画を作る』ためのものだから。いいものは取り入れればいい。強いて言うなら……『いい映画を作る』原則だけは曲げたくない。作品を作るたび挑戦している。より難しいアクションを、より東洋的なアクションを極めるために」

 最後に「一番好きな映画監督は」と尋ねると、「ジェームズ・キャメロン!」と間髪入れず返ってきた。やはり、娯楽の伝道者なのだ。

「インビジブル・ターゲット」予告編 (1分48秒)
  
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「インビジブル・ターゲット」(2007年、香港)

監督:陳木勝(ベニー・チャン)
出演:謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、余文樂(ショーン・ユー)、房祖名(ジェイシー・チャン)

8月30日、シネマスクエアとうきゅうほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
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