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「イエスタデイズ」 時空を超えた 切ない恋心

藤枝正稔2008/09/12
「32年前の恋人を探してほしい」。病床の父に頼まれた青年は、当時彼女がいた場所にたどり着く──。「イエスタデイズ」は時空を超えた、切ないラブストーリーである。
日本 映画 NA

<center>「イエスタデイズ」 (c)2008 YESTERDAYS FILM PARTNERS</center>
「イエスタデイズ」 (c)2008 YESTERDAYS FILM PARTNERS
 本多孝好のベストセラー短編集「FINE DAYS」の一編「イエスタデイズ」が映画化された。出演は「木更津キャッツアイ」シリーズの塚本高史と、「萌の朱雀」の國村準。窪田崇監督の長編デビュー作品である。

 がんで余命いくばくもない父が、海辺のホスピスに入院している。訪れた息子の聡史(塚本高史)は悪態をつく。そんな聡史に、父はある依頼をする。「32年前に付き合っていた女性を探してほしい。俺との間に子供がいるんだ」。手がかりは名前の「真山澪」、当時の住所、東洋音楽大学ピアノ課に在籍していたこと。さらに当時画家を目指した父が、スケッチブックに描いた肖像画だけ。父に反発し続けた聡史は、最後の頼みを渋々引き受け、澪を探し始める。彼女が当時暮らしていたアパートにたどり着き、父がスケッチブックに描いたアパートの絵を見ているうち、聡史はめまいに襲われる。誰もいないはずのアパートの扉を開ける聡史に、信じられない出会いが待っていた──。

 父の32年前のスケッチブック。描かれた絵の場所に行くと、めまいのような症状とともに、主人公は32年前のその場所を傍観する……奇想天外なファンタジーである。資料によると窪田監督は「タイムスリップしたのではなく、スケッチブックが起こした奇跡。父の過去の記憶と、現在を生きる聡史が共鳴している」とぼかしている。しかし私には「聡史がタイムスリップした」ように見えてしまった。若かりし父、澪、母と会って話し、一緒に食事する。父には将来についての助言さえしている。原作を読んでいないため、元はどう描かれているのか気になるところだ。だが、これではタイムトラベラーそのものであり、未来こそ変わらなかったものの、過去の人物に干渉しすぎである。似た設定の作品に篠原哲雄監督の「地下鉄に乗って」(06)がある。事業に成功した偉大な父に反発し、疎遠となった息子がタイムスリップ。若き日の父に接し、理解するストーリー。着地点こそ違うが、筋はよく似ている。

「イエスタデイズ」予告編 (2分20秒)

 ポイントは時空をさまよう主人公が、32年前の父と澪に接しているうち、澪に恋心を抱くことだ。先行き短い父の依頼を事務的にこなしていた聡史の思いは、次第に澪への恋に発展。真剣に澪を思い、彼女に対する父の本心を確める……さらに父への理解につながる仕組みだ。若き日の澪を演じる原田夏季の、陰のある美しさがミステリアスな物語を牽引する。しかし、若き父を演じる和田聡宏のくったくない明るさと、仕事人間になってしまった現在の父を演じる國村準との落差がありすぎて、同一人物と思えないのが難点のような気がした。若き日の父は「レストランは夢を売る場所なんだ」と言う。レストラン事業で成功した現在の父の店が、ごく普通のチェーン店に見え、夢を売る場所に思えないのも残念だ。

 恋愛にファンタジーを絡めた面白い発想の作品だが、イメージ先行で腑に落ちない点も多かった。観客を納得させる何かもうひと工夫がほしかった。

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「イエスタデイズ」(2008年、日本)

監督:窪田崇
出演:塚本高史、國村準、和田聰宏、原田夏希、カンニング竹山、蟹江一平、中別府葵、柳沢なな、ヒロシ、酒井法子、高橋惠子、風吹ジュン

11月1日、シネマート新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

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