「ブリュレ」 (c)2008CINEVITAL
離れ離れに暮らしてきた一卵性双生児の姉妹。13年ぶりに再会し、改めて絆をよみがえらせるドラマ「ブリュレ」。監督は劇場デビューとなる林田賢太。オーディションで選ばれた中村梨香、美香の一卵性双生児が主演している。
走るバスの中、骨つぼを抱いて椅子に座る女子高生。後から乗ってきた男子高校生が、親しげに彼女に話しかける。しかし反応はそっけない。少女の名前は水那子。13年ぶりに双子の姉・日名子に会いに来た。バスで声を掛けたのは日名子と幼なじみの大地だった。彼は水那子を日名子と間違えたのだ。日名子は北国で叔父と二人暮らし。叔父はケーキ屋を営んでいた。一方、水那子には「育ててくれた祖母か亡くなった」と、嘘をついてまで日名子に会いに来る理由があった。「悪性の脳腫瘍」と診断され、どうしても日名子に会っておきたかったのだ──。
“ブリュレ”とは、フランス語で“焦がす”意味。日名子がガスバーナーを使って焼く小さなデザートは、フランスの生菓子「クリーム・ド・ブリュレ」だ。日名子にはちょっとした衝動で、小さな放火をしてしまう癖がある。自分の存在を水那子に知らせるように放火を繰り返す。これに対し、水那子は日名子の放火を報じる記事をスクラップしていた。二人は知らず知らず、互いのサインをキャッチしていたようだ。そんな中、水那子が自分の秘密を言い出せず、家を飛び出してしまう。すると日名子は自分の家に火をつけてしまう。日名子の発したサインに気づいた水那子は帰宅。日名子を連れて逃避行が始まる。
初めは120分あった上映時間。編集で94分、91分と縮められ、最終的には71分に収まった。林田賢太監督は、ごく少ない登場人物に焦点を絞り濃密に描く。日名子の育ての親で、味覚障害があるケーキ職人の叔父。放火癖を知り、消防士を目指す大地。逃避行の先で出会った骨折したキックボクサーの池澤。みなどこか屈折したキャラクターだ。池澤は逃げる二人を車に乗せて助ける。二人の後を追い、大地もスクーターで合流する。日名子の育った秋田から、二人は一緒に育った南の海を目指す。美しいロケーションに、幼少期のイメージ映像が差し込まれる。
放火事件に端を発し、万引き、無賃乗車、無銭飲食、無銭宿泊をしながら逃避行を続ける姉妹。セリフでは「警察が動いている」と出てくるが、実際の姿はほとんど描かれない。池澤と大地の助けがあるものの、どこまでも二人だけの世界を貫き通す。自己完結に至るラストを見ると、一種のファンタジーのような解釈もできる。南の海にたどり着いた水那子の魂は炎となり、日名子の魂と一つになったのだろう。多くを語らない演出。人によって様々な解釈ができるドラマである。
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「ブリュレ」(2008年、日本)
監督・脚本:林田賢太
出演:中村梨香、中村美香、平林鯛一、瀬戸口剛、小田豊
10月25日、渋谷・ユーロスペースでレイトショー。作品の詳細は
公式サイトまで。