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「レッドクリフ PartI」を語る(3) チャン・フォンイー インタビュー

十年ぶりの映画出演 「悪役・曹操のイメージを変えたかった」
遠海安2008/10/30
11月1日に公開される呉宇森(ジョン・ウー)監督の歴史大作「レッドクリフ PartI」。中国「三国志」のクライマックス・赤壁の戦いを、壮大なスケールで描いた話題作だ。「映画の森」では、公開を控えて来日した関係者に作品への思いを聞いた。連続インタビューの第3回は、魏王・曹操を演じた中国のベテラン俳優・張豊毅(チャン・フォンイー)。“帝国の暴君”、いわば憎まれ役をどう演じたか。「曹操のイメージを変えたい」。十年ぶりの映画出演に込めた意気込みを語る。
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「曹操は政治、文学、書に秀でた、非常に魅力的な人物。彼が背負わされた不本意なイメージを変えたかった」と話すチャン・フォンイー=東京・赤坂で10月19日、吉田しのぶ撮影
「曹操は政治、文学、書に秀でた、非常に魅力的な人物。彼が背負わされた不本意なイメージを変えたかった」と話すチャン・フォンイー=東京・赤坂で10月19日、吉田しのぶ撮影
 まるで「三国志」の中の曹操が、目の前に現れたようだった。すっきりと姿勢のよい立ち姿、さばさばと潔い話し方。清濁併せのむ、度量の大きさを感じさせる。

 「曹操はとても魅力的な人物だ。政治、文学、書。字も美しく、さまざまな面で秀でていた。ぜひ演じてみたかった」。張豊毅(チャン・フォンイー)は、にっこりと笑った。「中国で描かれる曹操のイメージは、まったくの悪玉だ。京劇では背は小さく、顔は不細工で、白塗りにされる。私は今までとまったく違う“曹操像”を作りたかった」

 しかしながら、天下無敵の悪役である。「治世の能臣、乱世の奸雄」(平時は有能な政治家だが、世が乱れれば奸知を働かす)と呼ばれ、中国では「説着曹操、曹操就到」(曹操の話をすると、曹操が現れる=噂をすれば影がさす)と言われる。後世の不当な評価によるとはいえ、“憎まれ役”を引き受けることに不安はなかったか。チャン・フォンイーは、迷うことなく言った。

 「まったくない。私は彼が背負わされた、不本意な評価を覆したかった。曹操を政治家としてみれば、当時あれだけ広い領土を支配できたのは理由があったはず。自分が彼の立場に立ったら、兵士たちにどう接するか。追求したのは『歴史的事実に近づく』ことだった。曹操のイメージは、外見ではなく、心から演じることで作られる」

 「レッドクリフ」は、十年ぶりの映画出演となる。

 「出演を決めた一番大きな理由は、ジョン・ウー監督の作品だからだ。監督は香港、ハリウッドで活躍され、私もたくさん作品を見てきた。最初に会った時に言われた。『曹操か関羽か、どちらかを選べ』とね。赤壁の戦いで、関羽の出番はあまりない。曹操を選んだのは必然だった」

 もちろんジョン・ウー作品へは初出演。監督の演出方法を、チャン・フォンイーは手放しで賞賛した。

 「一番素晴らしいのは、演技を俳優に完全に任せる点だ。現場ではおおまかな状況説明だけ。起用を決めた時点で、俳優の能力に全面的な信頼を寄せている」
 
十年ぶりの映画出演、ジョン・ウー監督作品へは初めて。「監督は先輩のようでもあり、兄のようでもある。包容力に満ち、とても穏やかな人」と話す=同
十年ぶりの映画出演、ジョン・ウー監督作品へは初めて。「監督は先輩のようでもあり、兄のようでもある。包容力に満ち、とても穏やかな人」と話す=同
 アジア全域から集められた俳優たち。梁朝偉(トニー・レオン)、金城武、張震(チャン・チェン)……主要キャストがこれまでさまざまな作品で顔を合わせてきたのに対し、チャン・フォンイーは全員と初共演。物語で「全員を敵に回した」せいではないだろうが、俳優それぞれを冷静に、的確に見つめていた。まるで敵陣に攻め込んだ、騎上の武将のように。

 「トニー・レオンは成熟している。独特の個性、雅(みやび)な雰囲気がある。金城武ははにかみ屋。大きな子供のようで、かわいらしい人だ。チャン・チェンは、誠実で透明感がある。自分の考えをすぐ口に出し、何を考えているか顔を見ればすぐ分かる。弟のようにかわいいね。(趙雲役の)胡軍(フー・ジュン)は、“大人の男”らしさをアピールしていた(笑)。立ち居振る舞いに気を使い、頑張っていたよ」

 さすがに曹操、なのか。トニー・レオン演じる周瑜、金城武演じる諸葛孔明の知力、フー・ジュン演じる趙雲の勇猛、チャン・チェン演じる呉王・孫権の権力。すべて合わせて敵に回しても、難なく受け止められる余裕が、チャン・フォンイー自身からにじみ出ている。一方で、ウー監督へ寄せる厚い信頼。撮影現場でのやり取りは、聞いていて気持ちが温かくなる。

 「監督は落ち着きがあり、とても穏やかな人だ。撮影中に何があっても『大丈夫だ、大丈夫だよ』が口ぐせで、慌てる様子を見せない。兄のようでもあり、先輩のようでもあり、包容力に満ちている。脚本については、印象深いことがあった。書いた人が台湾か香港出身で、中国の歴史文化にあまり詳しくなかったんだな。時代劇なのに台詞が現代語のこともあった。そんな時に監督は、静かに私の傍に寄ってきて『整理(直し)をしてくれないかな、整理を』と言ったものだ」

 ベテラン俳優のチャン・フォンイーだが、映画への出演は陳凱歌(チェン・カイコー)監督の「始皇帝暗殺」(98)以来だ。同じチェン監督の代表作で、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した「さらば、わが愛 覇王別姫」(93)の名演を覚えている人も多いだろう。張國榮(レスリー・チャン)と鞏俐(コン・リー)、二人の人気スターを相手に、歴史に翻弄される京劇俳優を等身大で演じ切った。

 「『さらば、わが愛 覇王別姫』は、もちろん私にとって特別な作品だ。しかし中国では今、当時と同じレベルの映画を作ることが難しい。劇場に映画を見に行く人自体が減っているんだ。映画への出演依頼はあるけれど、脚本を読んでもピンとこない。市場が低迷すると脚本の質も落ちるようだ。だから今はドラマを中心に活動している」

 それでは今後も、彼の姿をスクリーンで見る機会は少ないのだろうか。

 「そんなことはない。しかし、予定がある訳でもない。決め手は脚本だ。いいものがあれば、どんな作品にも出る」

 即断即決、二言なし。最後はやはり、曹操の顔になった。

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「レッドクリフ PartI」(2008年、米国・中国・日本・台湾・韓国)

監督:呉宇森(ジョン・ウー)
出演:梁朝偉(トニー・レオン)、金城武、張震(チャン・チェン)、林志玲(リン・チーリン)、趙薇(ヴィッキー・チャオ)、中村獅童(特別出演)

11月1日、日劇1ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイト予告編サイトまで。

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